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ICT施工の取り組み

はじめに

 青森県五所川原市は、新青森駅から車でおよそ1時間の距離にあり、道中では、自動車専用道路である津軽自動車道を走行するが、これは、2013年迄に青森市~つがる市迄の約20キロが開通し、交通の便が悪かった県西部と県中心部を結ぶ重要な幹線として機能しています。
 沿線には広々とした田園風景やリンゴ畑が続き、遠くには津軽の象徴ともいえる霊峰・岩木山が姿を見せて、青森らしいのどかな景色を楽しみながら、五所川原市に本社を置く総合建設会社の齋勝建設に到着します。
 齋勝建設は、五所川原市を中心に、西津軽郡や北津軽郡など津軽西北エリアで事業を展開し、道路土木や港湾整備といった公共工事を主軸に、建築工事では、市庁舎や学校施設など多様な工事を手掛けており、津軽自動車道などの工事に参画し、地域のインフラを支えています。

事業概要

 
事業概要
法人名
齋勝建設株式会社
所在地
青森県五所川原市大字太刀打字早蕨98-4
電話
0173-35-2710
設立
1957年9月10日
従業員数
210人
事業内容
総合建設業

ICT施工を全工程で自社完結できる体制へ

 弊社は、2016年頃から業務のICT化に積極的に取り組んでおり、起工測量による現場状況の把握から、3次元(3D)設計データの作成・ICT建機を活用した施工・出来形計測・そして電子納品に至る迄、全ての工程を自社で完結できる体制を整備し、青森県内では、ICT施工の先駆者としてトップランナーに位置づけられる。
 国土交通省がi-Constructionを推進し始めてから、青森県内でもICT施工を求める工事が増えて来ており、安定した受注を確保する為には、自社で体制を整備する必要があるという強い危機感があります。
 i-Constructionは、建設業界の生産性向上を目的とした国の取り組みで、深刻化する人手不足に対応する為、ICTの積極的活用を促し、導入する事で工期短縮や効率的な施工が可能になり、公共工事入札のICT施工の実績や活用度が評価項目として重視され、こうした環境変化の中で、早期からICT化を推進し、競争力の強化に繋げています。
ICTバックホウによる整地作業
ICTバックホウのモニタ
ICTバックホウによる整地作業
ICT機器による整地後の土地
ICTブルドーザによる整地作業

外注依存からの脱却へ""現場の声が動かしたICT施工への転換""

 国の政策を受け、大手ゼネコンではICT導入が急速に進んでおり、地方の中小建設会社にとってICT化は依然として高いハードルで、弊社でも同様にICTが必要な工事では測量会社など外部作業者に依頼し、全て外注化に頼っていた。
 外注化でも業務は回っていたが課題も多く、工事の途中で発注者から設計変更を求められると、変更箇所の測量や設計をやり直す必要があり、外注先の都合で即時対応が困難なケースもあり、その間は工事を停止せざるを得ず、自社であれば柔軟に対応可能な設計変更も、外注依存により工期へ影響を及ぼす要因となっていた。
 その中で現場から自社でICT施工をやりたいと声が上がり、ICT施工は今後、国だけでなく県や市町村レベルでも広がる事が確実視され、社長に費用など説明したところ、迷いなく実施する事となった。
 創業者の三代目である齋藤社長は、日頃から「新しい技術を積極的に取り入れ、より良いものを作ろう」と社員に呼び掛けていた人物である。
 これに伴い、一気にICT化へ舵を切り、まずはICT機能を搭載した建機を導入・測量データや3D設計データを取り込んだ作業ガイダンス・制御できる環境を整備し、さらに、ICT施工に不可欠なソフトウェアや機器の導入も進めて来て、3D設計データ作成ソフト・ドローン・3Dレーザースキャナー・高性能サーバーなど、複数人で行なっていた作業を一人でこなせる現場端末アプリ迄、投資は大規模なものとなり、この決断が、同社をICT施工のトップランナーへの道に押し上げた。

ICT施工がもたらした劇的な効果""省力化と働き方改革を同時に実現""

 ICT施工の導入は、弊社の現場に大きな変化をもたらした。
 土木工事には、構造物の位置や高さを正確に示す為の丁張(ちょうはり)という重要な作業がある。
 木杭や杉板を使って設計図通りに基準を設置する工程で、測量から杭打ちまで多くの時間と人手を要し、設置後も毎日位置のズレを確認しなければならなかったが、ICT施工の導入により、この丁張作業が一切不要になった。
 現場で取得した測量データや3D設計データは建機のモニターに表示され、オペレーターは画面を見ながら設計通りに作業を進める事ができ、掘削が設計より深くなりそうな場合には、建機が自動的に制御し、過剰な掘削を防止する。
 丁張には3、4人の人員を配置していたが、その必要がなくなり、建機の近くでオペレーターに指示を出す施工助手も不要となり、危険を伴う作業のリスクも大幅に減少し、省力化だけでなく、安全性の向上にも繋がっている。
 さらに、ICT施工は社員の働き方にも良い影響を与え、作業員の人数が減っても効率が大幅に向上する為、これまで納期に合わせて恒常的だった残業や休日出勤の負担を大幅に軽減でき、会社として福利厚生の充実にも取り組み、社員の健康増進や家族との時間を大切にできる環境作りを推進している。
ドローン測量で三次元計測している風景
測量用のドローン
測量用のドローン
ドローン測量で三次元計測している風景
ドローン測量で三次元計測している風景
測量用のドローン
地上型レーザースキャナーで現場の地形を三次元計測している様子
地上型レーザースキャナーで現場の地形を三次元計測している様子
地上型レーザースキャナーで現場の地形を三次元計測している様子
点群処理・3Dモデル生成のデスクワーク工程

試行錯誤から人材育成へ""成功体験が生んだICT施工の定着""

 ICT化を進める上で大きな壁となったのが、技術を使いこなせる人材の育成である。
 導入当初は、各現場で担当者にICT技術を学ばせながら作業を進めていたが、慣れない作業が重なり、現場が混乱して負担が増えるという課題が生じた。
 そこで方針を転換し、まずはICT施工の技術指導者を一人育成し、そのスタッフをICT活用を進める現場へ派遣する体制に切り替えた結果、功を奏し現場の作業は一気に円滑に進む様になり、成功事例が生まれると、未だICT施工を経験していない現場の社員たちも、「自分の現場でもICT施工を取り入れたい」「ICT技術を学びたい」という声が上がり、効果がでて来て、社員の姿勢や意欲が大きく変わって来た。
 現在、技術指導者は1名だが、彼を中心に、ICT技術を扱えるスタッフが増え始めて来た。
 ICT施工は、機器やソフトを導入するだけでは成果に繋がらない為、人材育成こそが成功の鍵であり、この取り組みはICT施工の導入を検討する中小建設企業にとっても参考となるモデルケースです。

3Kの現場からICTが支える魅力ある職場へ

 嘗て建設業は「3K(きつい・汚い・危険)」と揶揄される事も多く、ICT施工が全現場に浸透すれば、そのイメージは大きく変わって来る。
 測量業務の様に熟練した技術が求められる作業も、今ではコンピューターが正確に補助していて、デジタル技術に親しんだ若い世代にとっても入りやすい環境が整い、仕事へのモチベーション向上も期待できる。
 従来の様な師匠と弟子、先輩と後輩といった徒弟制度に依存する働き方から、若手もベテランもそれぞれの強みを発揮でき、より開かれた職場へと変わりつつある。
 ICTの活用が進む事で、建設現場は安全性が高まり、効率的で誰もが生き生きと働ける場所へと進化し、齋勝建設の取り組みは、まさにその未来を先取りするもので、ICT施工を軸にした新しい働き方が、建設業の明るい将来像を示している様に感じられる。
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